来年度税制改正で中小企業の事業承継を促進する「事業承継税制」の拡充が論点に浮上している。子どもや親族への株式譲渡の際にかかる贈与・相続税を、条件付きで減額する案が有力。中小企業の活性化を目指す経産省と、税収減を避けたい財務省の間で綱引きが繰り広げられそうだ。
現在の事業承継税制は、株式譲渡にかかる贈与・相続税の支払いを条件付きで猶予する仕組み。経営を引き継いだ後5年間は事業を継続し、雇用を平均で8割維持することが必要で、条件を満たさなくなった時点で猶予されていた税金の支払いを求められる。経産省幹部は「猶予制度では、将来の納税のため、どのみち巨額の現金を準備する必要があり申請が増えない」と指摘。年5000〜7000社程度の申請を見込んでいたが、実際は年500社程度にとどまり、多くの企業が「廃業」の道を選んでいる。
欧米では、事業承継した後、一定期間雇用を維持すれば、その期間に従業員に支払った給与の総額を贈与・相続税から差し引く減額制度を取り入れている。贈与・相続税は減収となるものの、長い目でみれば企業の存続で法人税の増収を見込むことができ、税収全体に与える影響は中立とされる。
経産省は、今後10年で70歳を超える中小企業経営者の数は約245万人になると分析。うち半分の約127万社で後継者が決まっておらず、早期の対応が必要との立場だ。
経済の低成長が続く中、安倍晋三政権は中小企業の活性化を重要課題に位置づけている。自民党税制調査会の宮沢洋一会長も安倍政権での経産相経験者。どの程度の拡充策になるかはともかく、事業承継促進に向け前向きに検討が進みそうだ。
提供元:エヌピー通信社
–「Tabisland」より-