上場株式等の譲渡益や配当金の住民税申告の注意点

リエ
「所得税と住民税で異なる申告ができると耳にしたのですが、どういうことでしょうか。」

黒田
「おそらく平成20年度の税制改正において、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できることが明確化された件だと思います。通常、所得税の確定申告書を提出すると、自動的に住民税の申告書も提出されたとみなされます。そのため、住民税の申告書を提出した経験のある人はかなり少ないと思います。」

リエ
「そうですよね。」

黒田
「あえて所得税と住民税の課税方式を選択して申告書を提出することで、税負担が軽くなるケースが考えられるのです。上場株式等の配当所得等について源泉徴収有りの特定口座を利用している場合になりますが、(1)上場株式等の配当所得について、所得税は総合課税制度を選択し、住民税申告において申告不要制度(または申告分離課税制度)を選択するケース、(2)上場株式等の譲渡所得等について、所得税の申告分離制度を選択して損益通算や譲渡損失の繰越控除制度を適用し、住民税申告において申告不要制度を選択するケースが考えられます。」

リエ
「申告することで税金が安くなるのであれば、是非適用したいです。」

黒田
「ただ、注意しなければならない点もあります。ケース(1)では、課税所得が900万円超となる人が適用すると所得税及び住民税額が増える計算になりますし、ケース(2)では、地方自治体により条件が異なりますが、住民税や国民健康保険料、医療費の自己負担割合等が増加してしまう可能性があります。」

リエ
「ちゃんと申告する前に自分の条件を確認しなければ、かえって負担額が増加することもあり得るのですね。」

黒田
「はい。住民税の申告書の提出期限は、住民税の納税通知書が送付される前までとされていますが、提出前に必要書類を含めて、事前に市区町村へ確認することをお勧めします。」

リエ
「申告不要制度を選択するってどういうことですか。」

黒田
「例えば『上場株式等の譲渡所得等の確定申告書を提出しましたが、住民税では申告したくありませんので住民税の申告書を提出します』ということになります。課税する市区町村でも混乱することが予想されますね。住民税申告書の備考欄等に上場株式等の譲渡所得について申告不要制度を選択する等の付記をし、納税者側が課税側への意思表示をする必要かもしれませんね。」

–「Tabisland」より-

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