上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除等の特例の適用を巡り、更正の請求書をもって連続して申告書を提出している場合に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、連続して申告書が提出されていないのであるから、上場株式等に係る譲渡損失を翌年に繰り越すことができないのは明らかと指摘して、審査請求を棄却した。
この事件は、審査請求人が上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措法37の12の2)の特例に基づき、前年分の上場株式等に係る譲渡損失等の金額を、翌年分の株式等に係る譲渡所得等及び上場株式等に係る配当所得から繰越控除して申告した後に、その要件を充足するため、前年分の所得税等の申告書に上場株式等に係る譲渡損失等の金額の計算に関する明細書等を添付していなかったことを追完する旨の所得税等の更正の請求をしたのが発端となった。
しかし原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、その全部取消しを求めて審査請求したという事案である。請求人側は、更正の請求書は翌年分の申告書よりも先に作成したものであるから、提出日の先後ではなく、作成順序の先後をもって、実質的に判断されるべきであるという主張を展開した。
これに対して裁決は、1)上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の所得税の申告書に計算明細書等を添付して提出し、かつ2)その後に連続して申告書を提出し、3)特例の適用を受けようとする年分の申告書に控除を受ける金額の計算明細書等の添付がある場合であることが求められると解釈。
また通達は、その計算明細書等の添付がある申告書を提出した場合は、計算明細書等を添付せず提出された申告書については、国税通則法23条が定める更正の請求に基づく更正により、新たに上場株式等に係る譲渡損失があることとなった場合も含まれるとしていると指摘した。
その上で、この特例は、更正の請求に基づく更正により、新たに上場株式等に係る譲渡損失があることとなり、その後連続して申告書を提出している場合であって、特例の適用を受けようとする年分の申告書に計算明細書等の添付がある場合に適用されるという判断を示した。しかし請求人は、前年分の申告書に計算明細書等を添付しなかったのであるから、要件を満たさないことは明らかであると指摘して、審査請求を棄却した。
(2016.12.02国税不服審判所裁決)
提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)
–「Tabisland」より-