不動産の売主を非居住者と認定、買主側に源泉徴収義務があると判示

不動産の売買を巡って、売主が非居住者か否か、譲渡代金の支払時に買主側が源泉徴収義務を負うか否かの判断が争われた控訴審で東京高裁(青野洋士裁判長)は、原審どおり、売主は非居住者に該当すると認定した上で、買主側には非居住者であるか否かを確認すべき注意義務を尽くしたとは認められず、当事者間において社会通念上それを確認するのが困難だったとも言えないため、源泉徴収義務を否定すべき理由はないと判断、控訴を棄却した。

この事件は、不動産会社が土地建物の売買契約を交わし、売主に7億円超の売買代金を支払ったところ、原処分庁が売主は非居住者のため不動産会社側に源泉徴収義務が生じると認定して源泉所得税の納税告知処分をしてきたため、不動産会社側がその取消しを求めて提訴したのが発端となった。

これに対して一審の東京地裁は、売主が非居住者であるか否かを買主が確認すべき注意義務を尽くしたとは言えず、源泉徴収義務を否定すべき理由はないと判示して棄却したことから、不動産会社側が更にその取消しを求めて控訴したという事案である。

控訴審はまず、売主が米国の国籍及び社会保障番号を取得して、米国発給の旅券で日本に入国し、日本の滞在期間が半年にも満たず、米国にある住居において長男と生活していたことなどの事情から、日本国内に住所があるとされていても、生活の本拠は米国内にあったというべきであり、不動産の譲渡対価の支払日まで1年以上日本国内に居所を有していたとも認められない以上、売主は非居住者であると認定した。

また、売主の住所が住民票等の公的な書類に日本国内にある旨記載されていたとしても、1)売主が1ヵ月にわたり米国に帰国して以前に米国で生活していた旨を担当者に説明していた、2)譲渡対価を米国所在の銀行に振り込むように依頼していた、3)譲渡対価の送金依頼書には米国内の住所が記入されていた――ことなどの事実関係を指摘。

これらのことから、売主が非居住者であるか否かを確認すべき注意義務を尽くしたということはできず、その確認のために売主の生活状況等を質問することが不動産の売買取引をする当事者間において取引通念上不可能又は困難だったということや、その質問等をしても確認できない結果に終わったということもできない以上、買主である不動産会社側の源泉徴収義務を否定すべき理由はないと判示して、控訴を棄却した。

(2016.12.01東京高裁判決、平成28年(行コ)第219号)

 

提供元:21C・TFフォーラム(株式会社タックス・コム)

–「Tabisland」より-

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